勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力


本書は「フレームワーク力」というタイトルに惹かれて購入したのだが、本書のタイトルは正しくは「7つのフレームワーク力」ではなくて「7つのビジネス思考力」ではなかろうか。「7つのフレームワーク力」の方が売れると踏んで命名したんじゃないかなあ。

勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践

勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践

あと、「7つ」ってちょっと多いんだよなー。「マジックナンバー7」って言われるけど、7つも覚えられないし、焦点がぼける。7つの習慣だって


第一部・パラダイムと原則について
第二部・私的成功
第三部・公的成功
第四部・再新再生


にサマってあるんだから、本書も


・左脳にまつわるビジネス思考力の開発
・右脳にまつわるビジネス思考力の開発
・ビジネス思考力を支える、ココロとカラダの開発
・偶然を力に変える


ぐらいに「3+1」ぐらいにまとめてあると、全体像を把握しやすいのではと思った。右と左にきれいに分かれないけど。


さて、「フレームワーク力」について。
いま司馬遼太郎の『坂の上の雲』を読んでるんだけど、「フレームワーク力」は、連合艦隊作戦参謀だった秋山真之の特徴とリンクするように感じた。

まず真之の特徴は、その発想法にあるらしい。その発想法は、物事の要点はなにかということを考える。
要点の発見法は、過去のあらゆる型を見たり聞いたり調べることであった。かれの海軍兵学校時代、その期末試験はすべてこの方法で通過したことはすでにのべた。教えられた多くの事項をひとわたり調べ、ついでその重要度の順序を考え、さらにそれに出題教官の出題癖を加味し、あまり重要でないか、もしくは不必要な事項は大胆にきりすてた。精力と時間を要点にそそいだ。

『坂の上の雲』第二巻 P230



過去のあらゆる型から、新たに要点を抽出する。これは、フレームワーク力そのものだと思った。
また、秋山真之がアメリカに渡り、アメリカ海軍のマハン大佐から海軍戦術の研究方法について教わる箇所がある。

「その研究方法は」
と、マハンはいう。
「過去の戦史から実例をひきだして徹底的にしらべることである。近世や近代だけでなく古代もやるほうがいい。戦いの原理にいまもむかしもない」
「陸と海の区別すらない。陸戦をしらべることによって海戦の原理もわかり、陸戦の法則や教訓を海戦に応用することもできる」

『坂の上の雲』第二巻 P238

――それから得た知識を分解し、自分で編成しなおし、自分で自分なりの原理原則をうちたてることです。自分でたてた原理原則のみが応用のきくものであり、他人から学んだだけではつまりません。

『坂の上の雲』第二巻 P239



秋山真之も非常に多読の人であったらしく、そうやって学んだものの中から要点を分析・整理し、「自分で」原理原則を打ちたてたらしい。
この「自分で」というところが、フレームワーク力の要点だと思う。
勝間和代のビジネス頭を創る〜」でも有名なフレームワークがいくつも紹介されているが、これをバカチョンで使っているだけではだめで、自分なりにアレンジし、自分の血となり肉とならないとだめなのだろうと思った。


ビジネスコンサルティングでよく使われているフレームワークを集めた本は、前にちょっと探したけど見つからなかった。本書はフレームワークに関心のある人にはお奨めと思う。ただし、本書だけでは各フレームワークの真髄はなかなか感じ取れないはずなので、更に関連書籍を読み、自分なりに研究・アレンジすることが大事だと思う。