東大生はバカになったか


佐藤優さんだったかが雑誌で語っていた、本を速読できるようになるためには、様々な学問の背景知識となる「教養」を身につける必要があるというような話が印象に残っていた。
書店でぷらぷらと立ち読みしていたとき、ふと本書を手に取り、ダランベールの「人間知識の系統図」なる図が掲載されていたので、これはおもしろそうと思い購入。


東大生はバカになったか (文春文庫)

東大生はバカになったか (文春文庫)




教養論ということだったので、著者おすすめの古典などが諸々紹介される展開かと思っていたのだが、いい意味で期待を裏切られる。本書の後半部分では、現代社会を生き抜いていくために必要な基本的知識を、いかにして身につけるかに主題が置かれている。
「現代のリテラシーとして身につけるべき実践的能力」として紹介されている能力は、自分自身、日々の仕事の中で改善しなければと思っている点ばかりだ。あと思うのは、これらって所謂コンサルタントに求められる能力のような気がするのよね。所謂コンサルタントの能力などというものは、コモディティ化してしまうということか。この本が出たのが2001年だから、実際そうなっているな。

1.実践的言語能力
  イ.調べて書く能力
  ロ.人を説得する能力
    ロジック力と人の心を動かす表現力
  ハ.論争して勝てる能力
    ディベート力
    相手の誤った議論を見抜き、それに反駁する能力
  ニ.コミュニケーター能力
    メディアを通じて大衆に、難しい問題の論点を分かりやすく伝え、説得する能力

2.実践的情報能力
  情報を収集する能力
  情報を評価する能力
  情報を利用・応用する能力

3.実践的プロジェクト遂行能力
  発想力、構想力、目論見を実現していく能力
  チームを組み、それを動かす能力

『東大生はバカになったか 』P313 現代のリテラシーとして身につけるべき実践的能力



これらの実践能力は、人に教えられてすぐに身につくようなものではない。他人と議論したり、情報収集を行ってそれを基にアウトプットを出したり、実際にプロジェクト(日々の細切れになった仕事でもいい)を遂行して、試行錯誤しながら身につくものである。
「教養を学ぶ」というのは、もしかしたらシャドウボクシングのようなものなのかもしれない。日々の仕事や生活に直接的に役には立たないテーマだったとしても、教養を学ぶことを通じて、情報を集め、考え、アウトプットを出し、議論する「機会を得る」ことができるのではないか。
教養を学ぶ意味とは、そんな感じに読み取った。


書中で引用された、ポール・フルキエの「哲学講義」(中村雄二郎他訳。筑摩書房)や、アリストテレスの虚偽論、誤謬推理論を取り扱った本は今後要チェック。でも、難しくて速攻挫折しそう・・。買っただけで満足する可能性大。