勝負脳の鍛え方

勝負脳提唱者の本を読んでみた。


<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)

<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)




勝負脳とは著者の造語であり、「勝負に勝ちたいと願い、相手を上回る戦略をあれこれ考える」という一種の知能を指すらしい。
勝負脳のコンセプトのベースとなっている理論が「サイコサイバネティックス理論」であり、

人間が成功するか否かは現象の受け取り方次第であり、成功するイメージさえ持っていれば必ずそこにたどり着くことができる



という内容であるらしい。


このあたりは、カーネギー、マーフィー、中村天風など、自己啓発系の古典でおなじみの、「思考は現実化する」という考え方と共通している。毎日前向きな考えを持ちながら暮らしたり、他人に明るく親切に接したり、なりたい自分になったと思い込んで日々行動したり、悲観的な考えは一切持たないように努力する・・・といった習慣づけが推奨されている。


自己啓発系の本と比較して本書のよいところは、「サイコサイバネティックス理論」に脳外科の専門家として、著者独自のアレンジが加えられているところ。スポーツ、特にマラソンを例にとり、<勝負脳>を鍛えるために実践すべきポイントが具体的に説明されている。


一番なるほどなあと思ったのは、「苦しいときにも、いかに自分にとって『いいイメージ(都合のいいイメージ)』を持ち続けるか」というはなし。
仕事、勉強、スポーツなどでは、当然苦しい時、うまくいかないときがある。こんな時、例えばマラソンで先頭ランナーを追いかけている状況であるならば、「相手は今、『追いつかれるかもしれない』というプレッシャーで、相当苦しんでいるに違いない」と自分にとって都合よく考え、精神的に優位に立つよう努めることを推奨している。


また、時には「相手が見えないぐらい引き離されている」という、一見絶望的な状況もあり得る。
著者によれば、こんな時でも諦めるのではなく、姿が見えない相手に勝つという「結果」を求めることを一旦忘れ、勝つために「今できること」を考え実行することに集中すべきと説く。
本書ではマラソンを例にとって、無駄のない走りをする、膝を出す角度を調整する、あごの角度を調整する、等が挙げられているが、仕事なら、とにかく「やるべきこと」を一旦紙に書き出す、やるべきことに優先度をつける、誰がいつまでに何をするかを決める、期限を延ばせないか、または人を増やせないか等の調整・段取りをする(または人に頼む)なんかが考えられる。
とにかく、「もうだめだ」という思考停止の状態を回避するために、根性論ではなく、合理的に対処することが重要なのだと理解した。


あとは、仕事、勉強、スポーツでよい成果を上げるためには、笑顔であったり、友人や家族と楽しく会話することが実はすごく重要なのだというはなしは目から鱗だった。
これらは、前向きな性格をつくり、脳の疲れをとるために非常に重要であるらしい。ついつい、仕事や勉強の時間を増やすことが重要と思ってしまって、飲んで唄って楽しむこととか、リラックスして談笑することとか忘れがち・・・。
これも日々のToDoに落としていきたいと思う。


北島の連続金メダルに本当にこの勝負脳の考え方が貢献したかどうかはわからないが、色々と得るものの多い本であった。